「どのような見え方になりたいか?」つまり認可されている多くの眼内レンズの中から「どのレンズを選びどのよ
うに合わせるか?」は、白内障手術をする上で最も大切な過程だと当院では考えております。
患者さんの希望に耳を傾けてできるだけ寄り添うように心がけています。
もともとの目の度数を参考にして、現在の生活スタイルまたは今後希望する生活スタイル・年齢・性別・職業・ス
ポーツ・運転の必要性など、お一人お一人に合ったレンズと度数を患者さんと相談して選んでいきます。
当院では年間1000件を超える多数の白内障手術を行っていますが、術前説明において集団説明は行いません。
同じ年齢で同じ性別でもそれぞれ違う生活スタイルです。お一人お一人に個別でご説明し、御相談していきます。
①まず現在の生活様式や術後の希望についてのアンケートを記入して頂きます。
②アンケート結果をもとに経験豊富な専門看護師によるカウンセリングを行います。
③最終的には医師の診察時に検査結果やアンケート、カウンセリングの結果を元に患者さんと相談してレンズの種類
と度数を決定します。
基本的には網膜(黄班)保護のため、着色レンズを使用します。
低加入度数眼内レンズ(LENTIS)だけは保険診療(通常費用)で遠方~中間が見えてメリットが大きいレンズですが、
製品として着色レンズがありませんので非着色レンズになります。
網膜(黄班)を紫外線から守るため、加齢黄班変性の方には着色眼内レンズをお勧めします。
単焦点眼内レンズか多焦点眼内レンズ
保険適応で希望される場合
⇒単焦点眼j内レンズ、乱視矯正用単焦点眼内レンズ、低加入度(遠中)眼内レンズ(LENTIS)
選定療養(追加費用)で希望される場合
⇒多焦点眼内レンズ(2焦点、3焦点、焦点拡張型)
多焦点眼内レンズのいい適応
角膜や網膜・視神経の状態が良く、高額な選定療養費(追加費用)をかけてでもできるだけ眼鏡をかけずに生活したい方です。眼鏡に慣れている方は単焦点レンズをお勧めします。
多焦点レンズの特徴として、光を振り分ける為見え方のシャープさが単焦点眼内レンズよりも少し劣ります。
特に暗いところでのくっきりとした感じがやや落ちます。また、暗い所でライトを見ると光の輪(ハロー)やまぶしさ(グレア)をある程度感じます。夜間の運転には注意が必要です。
一般的に見え方に慣れるまでにしばらく時間がかかるといわれています。数%ですが、どうしてもなれない方や十分な視力が出ない方、ストレスになる方がいます。また、眼鏡が100%必要なくなることが確約されるレンズではありません。ただし、以前の多焦点レンズよりも進化した3焦点レンズPanOptix®(Alcon社)は94.8%の方が眼鏡を使わずに生活していると報告されています。
多焦点レンズが向かない方
・夜間運転が多い方
・職業が運転士の方
・角膜や網膜、視神経に疾患がある方
・緑内障で視野欠損がある方
・眼鏡をかけることに抵抗がない方
・若い頃の見え方になると思って過度な期待をしている方
・細かい事が気になって完璧さを求める方
・神経質な方、近くがしっかり見えることを求める方
①遠く(3mより遠方)に合わせる(普段眼鏡なしで運転、近くは老眼鏡を使う)
・もともと近視ではない方
・近視ではあったがコンタクトレンズを常用していた方
・なるべく眼鏡なしで運転したい方
・強度近視で遠くはもちろん眼鏡で近くも老眼鏡が必要な方
②中間距離(1m)に合わせる
(運転や細かな字は眼鏡でもいいがある程度中間距離50㎝~2mを眼鏡なしで生活したい)
・もともと運転以外は眼鏡を使っていない方
・運転をしない方
・家事が中心で遠くをあまり重視しない方
・ご高齢(80歳以上)で運転をしない方
③近く(30㎝)に合わせる(近くは眼鏡なしで遠くは眼鏡を使う)
・もともと近視の方で眼鏡なしでスマホや読書をしたい方
・運転時や普段は眼鏡をかけることが気にならない方
※間違った考え方として「今は近くが見えるので遠くに合わせれば遠くも近くも見えるようになる」逆に「遠くは眼鏡なしで運転できているので近くに合わせれば字も読めて今まで通り運転も眼鏡なしでできる」と考える方がいらっしゃいますが、水晶体を摘出して度数がなくなったところに眼内レンズを挿入して別の度数にするため単焦点眼内レンズでは遠くも近くも眼鏡なしで見えるようにはなりません。
※ただし、両眼手術する場合に(マイクロ)モノビジョンといって左右に少し差をつけて片目を遠方、もう一方を中間に合わせると両眼で広い範囲をカバーできます。ただし、モノビジョンも多焦点眼内レンズと同じように人によっては左右差が気になってストレスに感じてしまう場合もあります。(細かい事が気になる方にはお勧めできません)
※乱視がある程度強い場合は乱視補正レンズを使用します。ただし、軽い乱視や不正乱視のある方は効果が出ない場合や、かえって悪く感じる場合があるので非乱視用(通常の単焦点眼内レンズ)を使用します。